代表取締役社長 二宮 一也
私たち横浜工作所は1920年の創立以来、船舶修繕の分野で100年以上に及ぶ歴史と実績を積み重ねてきました。横浜市内の沿岸部に本社事務所とドックを構え、様々なお客様の船舶修繕や定期点検等を日々行っているほか、創業から続く、技術者が船舶の停泊地に赴いて修繕工事を行う「沖修理」もご評価をいただいています。近年、船舶修繕の業界は、後継者不足によって培った技術の伝承が進まず、突発的なトラブルに対して緊急修理ができる企業が減少しているのが実情です。そんななか、当社はどのような船舶のトラブルでも、現場に駆けつけ、その場で修理ができる豊富な経験と技術力を有しており、その評判が全国に広がり、現在では多い時には年間700件にも及ぶ船舶修繕の依頼をいただき、業界における当社の存在価値はますます高まっています。
また、当社は米軍艦船のメンテナンスも長年手がけています。米軍の案件を担うには、豊富な経験と高度な技術力に加え、英語でのコミュニケーションをはじめとした特殊な専門スキルが求められます。米軍艦船の修理を担っているのは当社を除くと、いずれも国内最大手の重工メーカーばかりであり、私たちのような従業員数が100名にも満たない中小企業が担うことは極めて異例のことです。この事実からも、お客様の私たちへの信頼が、いかに厚いかをおわかりいただけることでしょう。
現在当社では、長年にわたって培ってきた技術力をもとにした新規事業も展開しています。それは船舶修繕のみならず、陸上の環境プラント工事や機械部品の加工・製作などもご要望に応じて手がけています。さらに、数年前からは油圧ホースの製作・取付にも着手しており、世界的な油圧ホースの老舗メーカー「GATES」社と業務提携を行い、新たな事業の柱とするべく育てています。
こうして将来に向けて事業の拡大を図っている当社ですが、今後は船舶修繕の枠を超えた「造船事業」にも挑戦していきます。自社でまるごと一から船を造ることで技術の幅を広げ、若い技術者に対しても、船舶修繕だけでは得られない船舶構造を根本から理解できる機会を提供し、人材を育成しつつ、会社全体の発展と技術力をさらに向上させていきたいと考えています。
そのために、大手造船会社に勤務していた若手技術者を経験者採用で迎え入れ、設計部門も新たに立ち上げました。また、すでに受注を開始しており、新たな取り組みに向けて本格的にスタートしています。
横浜工作所が、これからどのように進化していくのか、私自身も胸躍る想いでいます。現在のドックでは大型船舶に対応できないため、近い将来、本社を移転する検討もしています。横浜から横須賀にかけての東京湾沿岸で、条件に合った相応しい場所を確保し、よりスケールの大きな新ドックを建設する方針です。そして新社屋には、社外の方でも利用できるヘルシーな食堂や、子どもを抱える社員のための保育所等も併設し、旧来の「造船所」のイメージを一新するような事業所を実現したいと考えています。
当社が属しているのは「造船業」というカテゴリーですが、そこにとらわれるつもりは全くありません。「造船業」をベースにして、社員それぞれが得意とするスキルを活かしながら、社員みんなで様々な事業に挑戦していきたい。
大企業を目指すのではなく、社員全員が幸福になれる適正な規模感で、自分たちがやりたいことを追求していく、そんなビジョンを描いています。そして、生み出された利益は社員全員で分かち合いたい。こうして企業の質を高め、新たな事業を起こして社会に貢献しながら、永続的に発展していく企業にしていきたいと考えています。
※内容はインタビュー当時のものです。